喪   と   忌

「祖母が今年の春になくなりましたが、年賀状は出してはいけないのでしょうか」、 「兄が亡くなりましたが友人の結婚式に出ないほうがよいのでしょうか」このような相談をよく受けます。一般に近親者が死亡した場合、一定の期間を定めて家にこもり、祝い事や交際をさけることを「喪に服す」とか「忌」と称しています。

「喪」とは、喪服を着て一定期間故人の冥福を祈り、慎ましく暮らすことを意味しま す。「忌」とというのは、死者はけがれたものといった考えから、神事を慎むことを いったものであります。こうした風習は古くから存在していました。服忌の長短を定めた法令を「服忌令」ともうしております。

ふるくには「養老令」という法令がありましたが、中世に入って神道家の手により忌(汚れを受ける)の制度と統合され、その考え方が江戸時代にまで伝わりました。江戸幕府によって貞享元年(1684年)最初の服忌令が制定され 、数回の改定を経て、元文元年(1736年)に最後のものが制定されました。現在一般に行われているものは、明治七年に発令された大政官布告による「服忌令」 にもとずいているものが多いようです。

昔は服喪中は喪服を着て、家に慎んでいた人たちがいました。また、喪中は魚類を食べない、神社に参拝しない、髪を剃らないなどのことが古くは行われていました。現在一般では、社会・生活習慣の違いもあって、殆どそのような風習は見られません 。この忙しい世の中、そのようなことをしていては生きていくことが難しくなるのかもしれ ません。

ところで、人が亡くなったときに喪服を着るようになったのは、大宝元年(701年 )に僧尼法が定められ、僧尼が墨染めの衣を着るようになってからと言われています 。僧尼にならって、喪に服する大衆も、喪の期間は黒の衣を着る風習ができたのであ ります。最近、日常生活の中で私共が「服喪」を考えるのは、年賀状を出すときくらいのものでしょう。「喪中につき年賀欠礼いたします」と書かれたハガキを頂くことがあります。また、結婚式や祝宴に招待されても遠慮すべきだ、ということはよく言われます 。

さて、喪といい、忌というも、年賀状を出していいかどうか、とか、結婚式に招待さ れたけど、出席していいのだろうか、というような次元だけで考えていいのでしょう か。亡くなった方の死を「けがれ」たものと考える以前に、私たちは一人で生まれ、一人で生きてきたわけではありませんから、その亡くなった方にいったいどれ程の恩を受けてきたか、それを考えていかなければなりません。一般に言われているように、ある一定期間を慎み深く暮らすことも大切ですが、慣習としてのみ、あれをしてはいけない、これをしてはいけないといったことよりも、その人から受けた恩に報いる行ないを積極的にしてゆくことの方を、この期間は特に大切にして日々を送りたいものであります。


服 忌 日 程 表


続柄\項目 忌日 服喪
父母 五十日 十三ヶ月
養父母 三十日 百五十日
継父母 十日 三十日
三十日 十三ヶ月
二十日 九十日
嫡子 二十日 九十日
末子 十日 三十日
養子 十日 三十日
父方祖父母 三十日 百五十日
母方祖父母 三十日 九十日
伯父・伯母 二十日 九十日
叔父・叔母 十日 三十日
兄弟姉妹 二十日 九十日
嗣孫 十日 三十日


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